みなさん日々の生活ご苦労様です。
ギョーテンです。
不定期に連載してきた、愛車の深堀りシリーズもこれで最後です。
【ブランド編】、【素材編】、【パイプ形状編】ときて、最後は【ジオメトリ―編】です。
※前回記事の内容は↓のリンクからご覧ください。
ロードバイクの性能を左右する重要な要素であると同時に、ライダーのポジションを決める要素でもあります。
FARNA-SLのジオメトリ―を分析して、その設計意図を紹介していきます。
この記事の内容を簡単にまとめると、以下のとおりです。
- FARNA-SLのジオメトリ―は、基本をおさえたオールマイティな味付け
- パイプ形状の時ほど目立った特徴は少ない
- トレール値とP点はサイズ間で統一性がないが、コスト面でのシワ寄せがきていると予想
- 日本人の体型に最適化するため、ヘッドチューブ長が他メーカに比べて長く設計されていると予想
※今回の記事は、自転車雑誌cyclesportsの連載企画「自転車道」の内容を基に独自に考察しています。ロードバイクの構造について詳しく取材されていますので、興味のある方は是非本も読んでみてください。
ジオメトリ―とは?
自転車で用いるジオメトリ―とは、フレームを構成している角パイプの寸法や角度を示したもので、その自転車のサイズを決めるもとになっています。
ジオメトリ―には「乗り手の身体に合わせる」、「自転車の性能を決定する」という2つの目的があります。
乗り手の身体に合わせる
洋服のサイズと同じで、人間は身長や手足の長さが人それぞれ異なるため、1つのサイズしかない自転車では、乗り手が限定されてしまいます。
なので、各メーカーは1つのモデルに対し、複数のサイズを展開しています(多いところだと13種類のサイズを展開)。
ジオメトリ―と、自分の体の寸法を理解しておけば、欲しいロードバイクのモデルが自分に体型にあったサイズを用意してくれているのかが事前にわかるようになります。
自転車の性能を決定する
ジオメトリ―は人が自転車に乗ることを考えてサイズが決定します。
同時に、人がどのように自転車を動かすのかを想定して各寸法が設計されています。
自転車の原動力(エンジン)は人間です。
つまり、どのような走行性能を持った自転車にするかを考える際には、ジオメトリ―は欠かせない重要な要素になります。
ジオメトリ―を理解すれば、その自転車がどのような走行を目指して設計されているのか、をある程度理解することができます。
ただ、自転車(ロードバイク)の総合的な性能は、ジオメトリ―、素材、パイプ形状それに構成される各種パーツによって最終的に決まるため、ジオメトリ―は参考材料の1つと考えてください。
各ジオメトリ―の名称
ロードバイクのジオメトリ―表に記載されている各寸法の名称と大まかな特徴を紹介します。
①シートチューブ長
シートチューブの長さ。
BB中心からシートチューブ上端までの距離で表記される。
スローピングの度合いで大きく変わるため、サイズ選びの基準にはならない。
②トップチューブ長
トップチューブの長さ。
スローピングフレームではトップチューブが傾斜するため、水平距離に換算した数値が表記される(ホリゾンタル換算)。
③ヘッドチューブ長
ヘッドチューブの長さ。
長いとハンドル位置が高くなり、上体が起きた楽なポジションになる。
レース用フレームはハンドルを低くセットするため、短めのものが多い。
※最近は空力性能を重視して、タテに長くヨコに薄いヘッドチューブも採用されている。
④ヘッドアングル
地面とヘッドチューブの中心軸がなす角度。
この角度が小さいと「寝ている」、大きいと「立っている」と表現する。
「ヘッド角」「キャスター角」とも表記される。
⑤シートアングル
地面とシートチューブの中心軸がなす角度。
サドルの前後位置やリヤセンターに影響する。
フレームサイズや車種によって変わるが、ロードバイクは72~75度であることが多い。
⑥オフセット
ヘッド軸の延長戦とフロントフォークエンドとの距離。
⑦チェーンステー長
BB中心とリヤホイール中心との距離。
ホイールベースや反応性、振動吸収性に関わる寸法。
短すぎると変速性能が低下する。
リヤセンターと表記されることもある。
⑧フロントセンター
BB中心とフォークエンドとの距離。
短いとハンドルを切ったときに前輪がつま先に接触してしまうため、小さいサイズではヘッドを寝かしてフロントセンターを確保する。
⑨ハンガー下がり
前後エンドを結ぶ直線からBB中心までの距離。
「BBドロップ」と表記されることもある。
また、地面からBB中心までの距離を意味する「BBハイト」で示すメーカーもある。
⑩ホイールベース
前後ホイールの中心を結んだ距離(軸間距離)。
前後でホイール径が異なる場合は、前後タイヤの設置点間距離となる。
700cのロードバイクは980mm前後が多い。
⑪リーチ
BB中心からヘッドチューブ上端中心までの水平距離。
シート角の大小で位置が前後するトップチューブの長さでは判断できない「ハンドルまでの距離」がわかる重要な寸法。
⑫スタック
BB中心からヘッドチューブ上端中心までの垂直距離。
ハンガー下がりに影響されるヘッドチューブ長とは異なり、「ハンドルの高さがどこになるか」が正確にわかる。
トレール値とP点について
トレール値とは、ヘッド軸の延長線が地面と交わる点と前輪中心との水平距離のことです。
P点とは、ヘッド軸の延長線と前輪中心を通る垂線が交わる点を指します。
トレール値が大きいとハンドリングが鈍くなり、自転車がゆったりと動くように感じます。
トレール値が小さいとハンドリングが機敏になり、直進安定性が下がります。
ロードバイクのトレール値の適正は55~58mmで、50~63mmが許容範囲と言われています。
また、P点が高いほどハンドリングが機敏になり、低いほどハンドリングが鈍くなります。
トレール値が同じであっても、P点の高低によってハンドリングが変化します。
チェーンステー長の適正値について
チェーンステー長は、フレーム性能のほか、変速性能に大きく影響を及ぼします。
チェーンステー長が短くなるほど、変速した際にチェーンの横方向の傾きが大きくなるので、チェーン落ちなどのトラブルが発生しやすくなります。
シマノはリヤディレイラーの変速性能を低下させないため、チェーンステー長の推奨値を405㎜以上と規定しています。
405㎜を基準として、チェーンステー長の長短が判断されます。
FARNA-SLのジオメトリー
それでは、いよいよFARNA-SLのジオメトリ―について解説していきます。
FARNA-SLは3サイズで展開されていて、Khodaabloomが公表していたジオメトリ―は下のとおりです。
カタログにない寸法(ホイールベース、スタック、トレール値、P点)については、こちらで算出したものになりますので、あくまで参考値となります。
また、トレール値とP点は、700×25cのタイヤ(タイヤ周長2105mm)を想定して算出しています(P点は地面からの高さを記載)。
この中から、自分が気になった部分を解説していきます。
チェーンステー長
リアセンター(チェーンステー長)は全サイズ405㎜で統一と、シマノの推奨値を守っていて、基本に忠実な設計をしています。
だとすると、シートチューブのつぶし加工は、チェーンステー長を短くする工夫ではなく、タイヤクリアランスを確保するための工夫だったということになります。
700×28Cのタイヤが装着できるワイドなクリアランスをこの当時から考慮しているのは、中々にユーザーフレンドリーな設計と感じます。
※FARNA-SLが発表された当時(2015年?)は、ロードレースのタイヤ幅は700×23Cが主流で、25cへ移行し始めるかどうかという時期でした。
シート角
シート角はサイズによって微調整されていますが、全サイズでロードバイク標準角度(72~75度)の範囲に収まっています。
サイズ展開が少ない中で、幅広い体形の方をカバーする工夫でしょうか。
BB下がり
BB下がりは全サイズでロードバイクの標準値とされる70mmに統一されています。
ネットのインプレでは「ロードレースよりクリテリウムのような緩急の激しいレース向き」とよく評されるFARNA-SLですが、ジオメトリーについてはどこかのレースシーンに特化するという訳ではなく、オールラウンダーな味付けを目指したということでしょうか。
ヘッドチューブ長
ヘッドチューブ長はレーシングモデルとしては長めの設計で、最小サイズでも120mmもあります。
同時期に発売され、アルミフレームの名作と名高いCANNONDALEのCAAD12は、FARNA-SLと同じサイズ500でヘッドチューブ長は115mmと、短めの設計(FARNA-SLは150mm)です。
一般的に、ヘッドチューブ長が長いと状態が起きた楽なポジションをとることができるため、レース用モデルではヘッドチューブ長を短めに設計するといわれています(最近は空力を考慮して長めに設計する場合もありますが)。
ただ、これはあくまで欧米のメーカーの通例です。
Khodaabloomは「日本人に最適化したジオメトリ」を目指して設計しているとのことなので、胴長短足(腕と股下が短い)の日本人には、ヘッドチューブを長く設計したほうがよりレースに適したライディングポジションをとれる、ということなのかもしれないですね。
トレール値とP点
トレール値とP点だけをみれば、各サイズによって数値がバラバラです。
細かい数字の違いはわかりませんが、サイズ465を基準とした場合、サイズ500はトレール値を小さく(ハンドリングを機敏に)し、P点を下げる(ハンドリングを鈍く)ことで、バランスをとっているようにも見えます。
しかし、サイズ465と430では、430の方がトレール値が長く(ハンドリングを鈍く)なり、P点も下げている(ハンドリングを鈍く)ため、ハンドリングの味付けを全サイズ統一したわけではないように見えます。
おそらく、フォークオフセットを全フレームサイズで統一しているシワ寄せがトレール値とP点にきているのだと思います。
これだけサイズ間でP点とトレール値が違ってくると、ハンドリングに違いが出ると思うのですが、Khodaabloomはその点をどう考えているのでしょうか?
いつか聞いてみたいです。
※参考に、「自転車道」ではおなじくオフセット値を全サイズで共通とし、トレール値がバラバラになっているLOOKの695について直接LOOKへ質問を投げて回答をもらっています。
LOOKの回答は以下のとおりです。
〔中略〕コラムが1インチでフォークブレードが細かった時代には、トレール値が操縦性に大きな影響を与えていた。しかし、現代ロードバイクのようにフォークブレードが太くなりヘッドベアリングが大径になれば、トレール値が操縦性に与える影響は少なくなる。これはエンジニアが実走を重ねて出した結論であり、実験データでも証明されている。〔中略〕理想としてはフォークオフセットは細かく調整したほうがいいが、体感できないところに無駄なコストはかけたくない。
自転車道より
P点とトレール値を全サイズで統一させようとすれば、その分オフセットの異なるフロントフォークを用意しなければならず、製造コストの増加につながります。
国内のマイナーと言っていいブランドでは、理想を求めるよりコストパフォーマンスを重要視した、としても不思議ではないので、Khodaabloomもトレール値とP点の優先度がそこまで高くないのかもしれません。
(総括)ジオメトリ―から見た、FARNA-SLの性能
自分が感じた考察をまとめると、
- FARNA-SLのジオメトリ―は基本に忠実でオールラウンダーな味付けをしていて、走行性能よりも乗り手の身体に合わせる目的を重視している。
- 走行性能については、パイプ形状や素材をこだわることで表現している。
ということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これで、愛車の深堀りシリーズは最終回となります。
中々の長期不定期連載になってしまいましたが、自分の中ではロードバイクについて知識を深めることができたので、やってよかったと思います。
今後は、今回学んだ知識を活かして、インプレ記事とかも書いてみようかなと思います。
コメント