ロードバイク初心者はアルミフレームを買うべし!KhodaaBloomのFARNAーSLから読み解く、アルミフレームのすごいところ【素材編】

COLUMN
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みなさん、日々の生活ご苦労様です。

ギョーテンです。

前回(といっても大分前ですが)、【ブランド編】と題し、アルミフレームロードバイクの良さについて語る連載記事をスタートし、自分の乗るアルミフレームロードバイクのブランド、KhodaaBloomについて紹介しました。

今回は、【素材編】です。

アルミフレームと一括りに呼ばれていますが、使用されているのはどんなアルミなのか、スチールフレームで使用されるクロムモリブテン鋼や、カーボンフレーム素材とはどんな違いがあるのか、素人なりに調べてみましたので、紹介します。

アルミ(アルミニウム)とはどういう素材か?

そもそも、アルミニウムとはどのようなものなのか、簡単に説明します。

アルミニウムは元素記号13番の金属で、金属の中でも軽金属と呼ばれ、比較的比重の軽い素材です(アルミニウムの比重は約2.7、最も軽い金属はリチウムで比重0.534、逆に最も重い金属はオスミウムで比重22.57)。

また、その加工のしやすさから、様々な工業製品に利用されています(ロードバイクのフレームもそのうちの1つです)。

アルミニウムの特性

  1. 低温に強い 
  2. 電気をよく通す 
  3. 光や熱を反射する
  4. 耐食性が良い
  5. 軽い
  6. 毒性がない
  7. 鋳造しやすい
  8. 強い(加工により強度が増す)
  9. 再生(リサイクル)しやすい
  10. 美しい
  11. 磁気を帯びない
  12. 加工性がよい
  13. 熱をよく伝える

参考 : アルミの基礎知識

ただし、世の中に出ているアルミ製品は、ほとんどがアルミニウム合金(アルミニウムを主成分とした、2種類以上の金属を混合した材料や、少量の非金属が加えられた金属的な性質をもつ材料を示します。)と呼ばれるものです。

純粋にアルミニウムのみで構成されている製品は、1円玉硬貨ぐらいです。

よって、ロードバイクに使用されているアルミ素材も、アルミニウム合金の一種ということになります。

アルミニウム合金の種類は?

アルミニウム合金は、国際合金記号化制度によって定められた「国際アルミニウム合金名」として、4桁の数字が割り振られています、その数字をみれば、おおよそ、どんな性質を持つ合金かわかります。

その4桁の数字の1桁目は混合されている金属の種類によって1~7まで種類に分類されており、用途によって使い分けられています。

1000番台(純アルミニウム)

99.00%以上の純アルミニウム系材料。

加工性、耐食性、溶接性などに優れるが、強度が低いので構造材には適さない(強度を要しない家庭用品、日用品、電気器具に多く用いられる)。

主な用途 : 1円玉硬貨、照明器具

2000番台(アルミニウム+銅)

ジュラルミン、超ジュラルミンの名称で知られる合金。

鋼材に匹敵する強度を持つが、耐食性に劣る。

主な用途 : 航空機部品、ねじ・ギア部品

3000番台(アルミニウム+マンガン)

マンガン(Mn)を加えたことで、純アルミニウムの加工性、耐食性を低下させず強度を若干上げたもの。

さらにマグネシウム(Mg)を加えることで強度が増す。

主な用途 : 建築用材、アルミ缶

4000番台(アルミニウム+ケイ素シリコン)

耐摩耗性や耐熱性に優れ、熱膨張率を抑えたもの。

主な用途 : ピストン、シリンダーヘッド

5000番台(アルミニウム+マグネシウム)

非熱処理型のアルミ合金の中で最も強度の高い種類が含まれ、溶接性に優れる。

主な用途 : 調理器具、船舶用材

6000番台(アルミニウム+マグネシウム+ケイ素シリコン)

強度、耐食性ともに優れるため、代表的な構造用材として挙げられる。

主な用途 : 車両・船舶などの輸送構造材

7000番台(アルミニウム+亜鉛+マグネシウム)

亜鉛とマグネシウムに加えて、銅を含んだ合金は、アルミニウム合金の中で最も高い強度を持ち、日本で開発された超々ジュラルミン(A7075)は現存するアルミ合金の中で、最も高い強度を誇る。

主な用途 : 航空機用材、スポーツ用具

そのほか、アルミニウムにリチウム(Li)を混合した合金など、どんどん新しい素材が今も開発中です。

参考 : アルミの基礎知識│種類や加工特性について解説(agency-assist.co.jp)

ロードバイクに使用されているアルミニウム合金は?

ロードバイクのフレームに使用されるアルミニウム合金は、上の中でも強度と耐食性に優れている6000番台が主に使用されています(Bianchiは7000番台アルミ合金を使用しているという噂ですが、詳細は不明です)。

主なロードバイクブランドが使用しているアルミニウム合金を下の表にまとめてみました(TREK、SPECIALIZED、FELTは合金名までわからず)。

※下表は、2021年2月現在、各ブランドの2021年モデルとして公式HPに記載されている情報をまとめたものです。

ブランドモデル名素材名アルミニウム合金
KhodaaBloomFARNA SL(旧モデル)EAST SL6011A
MERIDASCULTURA 7006066
GIANTTCR SL1ALUXX SL6011(※)
BRIDGESTONERS6PROFORMAT Aluminium6061
RIDLEYFenix SLA Disc6061
FUJISL-A 1.1A6-SL6066
SCOTTSPEEDSTER 10 DISC6061
TREKEmonda ALR300 Series ALPHA Aluminium?
SPECIALIZEDALLEZ SPRINT DISCE5 Premium Aluminum?
FELTFR30SuperLite アルミニウム?

※GIANTのアルミフレームロードバイクのハイエンド、TCR SL1は、2019年モデルまではGIANTのアルミ素材最上位グレードの「ALUXX SLR(6011Aアルミ合金)」が採用されていましたが、2020年以降は「ALUXX SL(6011アルミ合金)」に格下げ? されています。というか、「ALUXX SLR」自体がGIANTの2021年のどのモデルからも姿を消しているので、近々素材のアップグレードがあるのではと睨んでいます(ド素人の憶測)。

ロードバイクのフレームに使用されているアルミ合金の特性は? それぞれ何が違う?


上で紹介した、アルミ合金のそれぞれの機械特性(強度など、耐久性に関する性質)を比較すると、下表のとおりです。

素材比重(Mg/m3)引っ張り強さ(N/mm2)縦弾性係数(kN/mm2)
60612.731068.6
60662.734568.95
60112.734568.95
6011A
クロムモリブテン鋼(SCM430)7.8830214
カーボン(T800SC)1.805880294
カーボンの機械特性は繊維の場合のもの。

※比重は、水と比べて、体積当たりの重量がどれくらいあるかを示す(水は1.0)。
この値が大きいほど、同じ体積の素材と比べて重い。
※引張強さは、鋼材の引張力に対する最大の強度。
この値が大きいほど、強度が高い。
※縦弾性係数は、ヤング率ともいう。同軸方向のひずみと応力の比例定数。
この値が大きいほど、変形しにくい(剛性が高い)。

残念ながら、肝心のFARNA SLに使用されている6011Aアルミニウム合金の機械特性はいくら調べても出てきませんでした。

ただ、他の6000番台アルミニウム合金同士は比較しても数値に大きな差は見られませんので、6011Aだけ劇的に軽いとか、強度が高いなんてことはないと思われます(基本的に配合されている金属は同じで、多少の配合率が違うだけなので当たり前ですが)。

そうすると、各メーカーが素材を使い分けている理由が謎なのですが、おそらく、素材自体の強さではなく、フレームを形作る際の加工のしやすさや、コストを天秤にかけて素材を選んでいるのでしょう。

その結果が、フレームの剛性の違いや重量に表れているのではないかと推測します。

ロードバイクのインプレ記事で、「グレードの高い○○を使用しているためか、剛性が高い!」という表現をよく目にしますが、こうして素材の強度を比較すると、素材のグレードだけで自転車を評価するのは間違っているというのが良く分かります。

素材ももちろん大事ですが、素材をどのように使用したのか、まで考察しないと、本当の意味で理解したとは言えません。

参考① : Total Materia
参考② : SCM430とは【密度・硬度・ヤング率など】使い方と注意事項(機械技術ノート)
参考③ : 製品ラインアップ(TORAY)

【余談】KhodaaBloomが使用するアルミ素材「EAST SL」について

「6011Aアルミニウム合金」について、詳細な情報はわかりませんでしたが、今回、色々なメーカーのアルミフレームの紹介ページを見て思ったことが一つ。

KhodaaBloomで採用されている「EAST SL」って、GIANTのアルミ最高グレード「ALUXX SLR」の事じゃないか?

ということです。

両者公式HPの紹介を比較するとよくわかります。

KhodaaBloom : EAST SL

Farna-SLは、最高峰のアルミフレーム技術であるEAST SL (Ex-Aluminum Shaping Technology Super Light) を用いた超軽量アルミフレームのロードバイクです。重量剛性比の最も高い6011A アルミ合金を使用することで極限まで薄くトリプルバテッド加工することを可能にしたチューブに、最高の溶接技術と美しいスムースウェルディングが施されています。

公式HPより(https://khodaa-bloom.com/news/release/4910/

GIANT : ALUXX SLR

Materials 素材 :
妥協のない重量剛性比追求のため、6011Aアルミ合金のみで構成される。

Forming Methods 成形方法 :
最高水準の高圧流体成形技術により、ALUXX SLより20%薄く、より軽量なチューブに。
特徴的なフルードフォーミング(高圧の液体により複雑なチューブを自由に成形する技術)とプレスフォーミング(機械的な圧力によるチューブ形成の基本的な手法)を採用。

Welding Techniques 溶接技術 :
極限の軽さと最大の強度、そして美しさのために、スムースウェルディング(応力集中を避けるためのダブルパス溶接技術と手作業による研磨)と、スリムウェルディング(溶接材を減らすために最適化されたチューブ接合部加工)が採用される。

公式HPより(https://www.giant.co.jp/giant21/technology_sub.php?tec_name=aluminum_tech)

どうでしょう? 良く似ていると思いませんか?

KhodaaBloomを展開しているホダカは、かつてGIANTグループの一員だったこともあるので、おそらく今もロードバイクフレームの製造をGIANT(もしくはそのお抱え工場)へOEMしている可能性は高いです。

GIANTの最高グレードのアルミニウム素材と同じと思えば、一気に性能への期待感が増してくるのは自分だけでしょうか。

参考 : HODAKAの歴史・沿革(HODAKA)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

素人なりに調べてみましたが、調べれば調べるほどドツボにはまってしまい、具体的なことは何一つわかりませんでした、というのが今回の結論です。

ただ、同じアルミニウム合金であれば、素材自体の性能にそこまで違いがないということが良く分かりました。

次回は【パイプ形状編】と称して、「FARNA SL」のフレームそのものを観察して、どういう意図をもって設計されたのか、を、解説していきます。

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